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君が呼んでくれるから -OP:ショタロとコラさん-

2022/1/29 11:51 Sat

 大きな音で目が覚めるのは、よくある朝の一場面だった。聞き慣れた音と「ドジった」と呟くテノールにまたか、とローは目を擦りながら、毛布の中から起き上がる。
 音の方を見れば、空に伸びた長い脚がゆっくりと地面に戻っていくところだった。朝の少し冷えた海風が肌に寒く思い、毛布で体を包みローは音の方へ歩き出した。
 平均よりも遥かに大きな身体を横たえたまま、咥えたタバコに火をつけるコラソンに、いつも通り「燃えるなよ」なと苦言を呈す。
「なぁ、そのメイクする必要あるのか?」
 コラソンの近くまで来たローは、いつもより失敗しているそれに、ため息を漏らした。唇から耳へ、長く引かれるはずの口紅は、器用に頬の上で円を描いてた。右目の下の飾りは、転んだ弾みに擦ったのか掠れまぶたまで延びている。
 そんな失敗を一分も反省していなそうな笑顔を浮かべたコラソンが、ゆるりと煙を吐いた。
「お前が「コラさん」って呼んでくれるから、俺は「コラソン」でなくちゃならねぇ……」
 コラソンの赤い瞳がまっすぐにローを見る。
「だから、これは必要なんだ」
「なんだよそれ」
 じゃあ、と言いかけた言葉をローは慌てて飲み込んだ。

 ー「コラソン」じゃないあんたを教えてくれ。

 これはだめだ、とローはきつく下唇を噛んだ。言ってしまえば、この旅が、この時間が終わってしまうように思えた。いつからだろうか、終わりにしたくないと思うようになったのは。目頭に熱が集まるの誤魔化すように、いまだ寝そべったままのコラソンを睨みつける。怪訝な顔で見上げてくるコラソンに、ローは足元のその頭を軽く蹴った。
「朝ごはんの準備するから、あんたは顔洗ってこい!」
 身体を包んでいる毛布を引き寄せ、頬をわずかに濡らした涙を拭った。
 望みなんて持てない持ってはいけない自分に、それは不相応な願いでしかなくー。なんて沈む気持ちも、鼻をくすぐる何かが燃える匂いに遮断されていた。
 見慣れた景色になりつつあるそれに自然と笑みが溢れる。
「コラさん、燃えてるぞ」
 1秒1分長くこの人と居たい。
 身を起こし、火のついた肩を叩く背中を見ながらローは強く願っていた。


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