目の前に男が一人、立っている。
その男の目には、さぞ貧相な日本人男性が写っているだろう。
ろくに手入れもしていない黒髪を無造作に束ね、漫画のような丸眼鏡をかけ、何年着ているか分からないようなくたびれたスーツを着ている。
つまり、それが僕である。
一方、私の目には、憎たらしいほどの美男子が写っていた。
金色の髪を整え、先ほど購入したのかと思うほどの真っ黒なスーツ、海のように透き通る真っ青な目をしている。
「月とすっぽん」
この景色を見た第三者は、上記の言葉を真っ先に思い浮かべるだろう。
それはあながち、間違っちゃいない。
「すっぽん」が僕であると誰もが思うだろうが、
「月」が僕であると、読者にはお知らせしておこう。
この外人は僕の父であり母である。
もとは女であったが、僕を産んだ後、性転換をしたのだ。
その事実を5歳という若さで告げられた僕は、自分の運命を呪った。
そして、このような美しい姿ではなく、日本人男性である父の遺伝子を100パーセント受け継いだ事に絶望した。
父とは、性転換をする際に離婚したそうだ。
今は父となった母であるが、この人は僕を愛している。
家族愛などという平和的なものではなく、男として男を愛しているのだ。
こんな身近に「親近相姦」などという不埒な事態が存在するという事がまず信じられないが、その上ターゲットが僕であるという事は、信じがたい事実であった。
毎晩のように夜這いされ、目が覚めれば自由のきかないように固定されている。
「ぎゃああああああ」と叫びたいのは山々だが、近所迷惑なのを分かっているし、まさか親に襲われて警察沙汰になるわけにはいかない。
そんな僕を見て父、もとい母は、にやりと嫌な笑いを浮かべるのである。
そこから先は容易に想像出来るであろう。
何度もケツ穴に出し入れされ、駄目だと言っているのに中で出される。
縛られている手首からは血が滲み痛みを訴えるのだが、そんな事は気にしていない様子だ。
僕が言うのもなんだが、こいつは絶倫ではないだろうか。
僕は頭が良かった。
それが、冴えない僕にあるたったひとつのとりえである。
だから、先程、「月」は僕だ、と言ったのだ。
父もとい母は、頭が非常に悪い。
常識が無い。
品が無い。
知識が無い。
あるのは美貌だけである。
その美貌を使い、何人もの男女を虜にした。
しかし、ずば抜けた長所がある人物というのは、その他が足りないものだ。
父もとい母は、頭のねじが抜けている。
1本ならまだしも、5本ほど抜けているのでは無いだろうか。
きっと頭の中はあふれ出したオイルで大変な事になっているだろう。
だから「愛している」などという戯言を簡単に口に出来てしまうのだ。
僕はそんな生活が嫌いだった。
父もとい母から逃れるために、留学を決意した。
もともと秀才の僕は留学する理由なんて腐るほどあるのだから、すぐに手配を進めた。
気づけば、海外で住むようになり、3年が経過していた。
未だに僕は評価されないし、金もなくなりバイト生活。
町では殺人があったとか、強盗が入ったとか、あの事故は自殺なんじゃないか、とか。
興味の無い話題で溢れかえっている。
こっちで出来た友人も皆職につき、こんな暮らしをしているのは僕ぐらいだった。
バイトが終わり、帰路につく。
もう真夜中なので静かになった町を見回し、今月の家賃をどう乗り切ろうかなどと考えていた。
ふと気づくと、道の端の方に男が一人立っていた。
見るからに何か怪しい雰囲気である。
こんな所で殺人事件に巻き込まれるのは御免だったが、その道を通らないと僕は家に帰れ無いのだ。
あいにく、反対側の道は工事中でふさがっている。
男の横を通り過ぎる瞬間、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
「 」
まるで時間が止まったかのように、僕は動けなくなった。
体を動かさずに、目線だけで男を捕らえる。
…嗚呼、父さんだ、母さんがここにいる。
僕の思考回路が正常に作動するより、父さんもとい母さんが僕の腕を掴む方が早かった。
そこから先は容易に想像出来るであろう。
何度もヴァギナに出し入れされ、駄目だと言っているのに中で出される。
ただ、手は縛られていなかったし、3年ぶりという事で、僕も拒否できなかったのだろう。
読者の皆様に言っておきたい事は、子は親に似る、という事だ。
終
まあ、蛙の子は蛙という事ですかねえ…
結局「僕」も性転換しました
最後の所、ヴァギナかマンコか迷いました
ヴァギナの方が何か知的だよね
マンコだと、パンツ大好き変態中年男な感じがして嫌だわあ