フランとわん太は商店街を抜け、フィルのお店に行きました。
ドアベルを鳴らすとフィルがニコニコ出迎えてくれました。店内には他のお客さんはいないようです。フランは早速話を切り出しました。
「フィルちゃん、フィルちゃんはまほうつかいだよね。まほうでわん太とお話することってできる?」
フィルは申し訳なさそうに目尻を下げ、かぶりを振りました。
「うちが使えるのは付与……つまり、何かに力を与えることだけしかできないんよ。だからわん太くんとお話することは出来んなぁ」
フランは頷きました。
「センモンガイってやつだね」
「ごめんなぁ。力になれなくて」
「じゃあ、フィルちゃん。あたしがわん太とおしゃべりできるようになる魔法を、あたしに付与することは?」
「そういうのが意外と難しいんよ。自分や道具ならまだしも、意思を持つ生き物に術をかけるのは訳が違うからなぁ」
「じゃあ、フィルちゃん。ここの品物にはそういうのはない? わん太があたしとおしゃべりできるようになる道具は?」
フランは床から天井まで積み上げられた魔法の道具達を見回しました。
フィルは再度かぶりを振りました。
それが答えでした。
「……あたし、あたしはそんなにむずかしいこと言ってるのかしら。友だちとおしゃべりしたいってそんなにたいへんな願いなのかしら。あたしはただ、そっちの方がすてきだと思っただけなのに」
フィルのお店を出て道を戻りながら、フランは残念そうな顔をして小さく溜め息を吐きました。