手に手を取って駆ける少年と少女。それは端から見れば美しい光景かもしれなかった。
しかし少女はリャオの雇い主の――何度説明を受けても意味不明な――計画の要であり、少年にみすみす奪われてはならない存在だった。
だからリャオは剣を抜く。両手に双剣を携え叫ぶ。
「どこに逃げるヨー? お二人さん!」
わざと相手に位置を知らせ、少年が抜剣する時間を与えるために普段よりも速度を落として走り、あえて攻撃を受けさせる。
「遊ぶなリャオ! 貴様の悪い癖だ!!」
「はいヨー」
手加減を見抜いた雇い主からの怒声に一応は返事をしながらも、リャオは小声でぼやく。
「普段の言動は小物臭いクセにこういう時だけ鋭いんだからヨー……」
「え?」
「オマエもソー思うよなぁッ!?」
「いきなり何なんだお前は!!?」
ぼやきを聞き咎めた少年を一撃、二撃といなしながら、心は遊ぶことを考えている。
報酬が高額だからと引き受けたこの仕事、来る日も来る日も見張りばかりで退屈だったのである。たまには思いっきり体を動かして強敵と殺し合いたい。そんな健全なようでいて全くそうではない欲求を抱き、リャオは少年と鍔迫り合う。
少年はまるで素人だった。そこに落胆したものの、すぐに代替案を思い付く。すなわち、適当に手加減しながら切り刻んでやろうと思った。
「オマエじゃ遊び相手にもなんないからヨー」
「何だその『じゃあ仕方ねーなー』みたいな口調は!?」