「トニーは白黒はっきりしない奴が嫌いです」
「おはようございます。では」
「こんにちは。そしてさようなら」
「こんばんは。じゃっ」
「トニーはーーすなわち俺はーーヨヴィータ・ラインムートの第二人格です」
「そうだね。ひとりはつらいよね。さびしいよね。たえきれないよね……」
「トニーにはお前と話すことなどありませんが」
「早く大人になりたい。そうすればもっと色々なことが理解できるようになるのに」
「……いつからだろう? 人前で涙を流すことをはずかしいと思うようになったのは」
「いやだなあ。このまま毛布かぶって寝てたいなあ……」
「なんだこの変態野郎。うわーかかわり合いになりたくねー」
「しまったモノローグがだだもれでした」
「それの母親の話をしないでください。恋人と一緒になって実の息子を殺そうとした女のことなんて、思い出したくもない」
「トニーには神様の言わんとすることが理解できません」
「実はトニーは、ヨヴィータと会話したことはないのです」
「レファルがいたころと今の孤児院は違います。都市の行政改革によって予算が見直されました。先生たちもいなくなりましたし、かつてと異なるのも当然かと」
「トニーはいつ白堊にぶっ刺されるかワクワクしながら観察していた」
「それは白堊のどっちつかずなたいどが気に入りません。言い換えるなら、俺は白堊がきらいだってことだよ」
「慧羽はいつも掃除をおしつけられているような。もちろん助けてやる義理はないですけど」
「パルだけだったよ。それたちの本質を見ぬいていたのはパルだけだった。だからそれたちはパルに惚れ込んだんだ。ずっと昔の話だけど、そこだけは覚えてる」
「当時まだそれは幼かったので記憶がおぼろげですが、リャオとかいう騒がしいのとサーディットとかいうでかいのがいたような。そしていつのまにかいなくなっていたような」
「射撃はベアタに習ったよ。こう……、撃つ、撃つ、撃つ」
「院長代理。お前には人望がないですね?」
「……。なぜ院長でもない、いっかいの教師たるベアタが責任者のようにふるまっているのだろう」
「戦うための力を望んだのはトニーです。欠けたものをおぎなえると思ったから」
「ーーやっつけろ!」
「そうだね」
「やめてよ。助けて。だれか助けて。もう泣きたいよ、泣きたいよ……」
とても9歳児とは思えない喋り方をする。
「〜です」と「〜だね」が混在。大人のふりをしようとする時は敬語調。素は普通の子供らし……い、のか?
口調も、一人称すらも一定しない。言葉を荒げることはなく、常に冷静だが、情緒不安定気味。