シャドゥピュールは、よくジュリーグラッジと一緒に買い出しへ行く惑星へ一人で来ていた。
ーーー
遡ること、数時間前…
『うーん…』
『?どうかしたの、ママ…?』
『あ、シャドゥ…それが、今日は買い出しに行くって言ってたじゃない?』
『うん、言ってた。私、順次万全…』フンスッ
『あー…やる気満々なところ悪いんだけど、私行けなくなっちゃったの…』
『え、なんで…?』
『別件の用事が入っちゃったのよ…。ここから離れられないから買い出しは無しね』
『そんな…』
『そんなにショック受けなくても…。でも、困ったわね…買っておきたかった物もあったし…』
『…ねぇねぇ、ママ』
『何よ?』
『私、一人でお買い物する…!』
『えぇ…(困惑)』
『前より大人になれてるから、大丈夫…!』
『…本当に?』
『うん…!』
『(不安しかないんだけど…)』
『でも、買いたいのあるんでしょ…?』
『まぁ…』
『なら、行く…!』
『でもn』
『行く…!』キラキラ
『…はぁ、分かったわよ』
『やった…!』
「え、シャドゥお姉ちゃんおつかい行くの!?」
『うんっ…!』
「おぉ!」
「…シャドゥ姉ちゃん、本当に大丈夫なのかよ?」
『大丈夫…!!』
「『(やっぱ不安…)』」
準備中
『ちゃんとメモは持ったわね?道に迷ったら店の人に道聞くのよ。変質者や怪しい奴がいたら絶対について行かない、話を聞かない、信用しない。いいわね?』
『うん、大丈夫…!』フンスッ
『(本当に大丈夫かしら…)』
『じゃあ、行ってきます…!』
「お姉ちゃん、行ってらっしゃーい!」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「…大丈夫だとよろしいのですが」
「シャドゥ姉さん、頑張って…!」
「姉ちゃん、迷子なんなよー!行ってらっしゃーい!」
『(皆にお見送りされるって、なんか嬉しい…!)』
『気をつけていくのよー(…はぁ、ジュリーちゃんったら、随分シャドゥに甘くなっちゃってるわね…。本当に何も無いといいんだけど…)』
ーーー
こうして、ジュリーグラッジが別件の用事で手が離せなかったため、シャドゥピュール一人だけで買い出しをすることになった。
『(おつかい、がんばる…!)』
ふんすっ!と気合いを入れて買い出しに向かう。
『んと、まずは…』
メモを片手に見ながら、何回も母と一緒に通った道を通っていき目的の物が売ってある店へと足を運ぶ。
何回か、気になる脇道に好奇心で入って行ってしまいそうになるが、何とか頭の中の考え事をおつかいに戻しちゃんとした通りを通って行った。
『えっと、次は…』
順調にメモに書かれている物を買っていく。
時折、道が分からなくなってはジュリーグラッジに言われた通り近くのお店の人に道を訪ねる。
寄り道もせず迷子にならず、ビックリするぐらいシャドゥピュールにしてはちゃんとおつかいが出来ている。
そして、何事もなく無事にメモに書いてある物を全部買うことが出来た。
『(全部買えた…!)』
無事に買い出しを終えたことが嬉しくて尻尾をブンブン振りながら静かに喜んでいる。
あとはこのまま、家に帰るだけだ。
そう思い、帰ろうと足を動かそうとしたところに…
「ね、ねぇ」
声をかけられた。
『?』
キョロキョロと辺りを見渡すが、近くに声をかけた人物らしき姿は無かった。
気のせいかな?と思い再び歩き出そうとしたが、
「こ、こっちだよ、こっち」
『…あ、いた』
再び声をかけられた事により、声の主をやっと見つけることが出来た。
挙動不審な男だった。
男が道の角から体を出し、シャドゥピュールにこっちに来るようにと手招きをしていた。
この時点で、普通に怪しさMAXである。
だが、シャドゥピュールにはその男が怪しいと思わないらしく駆け足でその男の元へと行ってしまう。
『私に何が用…?』
「す、少し困ってる事があって…」
『困ったこと…?』
「と、とりあえず、こっちに来て欲しいな…」
再び、こっちこっちと手招きされついて行くシャドゥピュール。
ついて行くと男は、路地裏へと足を進めて行った。
もうこの時点で既にだいぶ怪しいが、何も疑いもせずにシャドゥピュールは男の後ろについて行く。
『…?何に困ってるの…?何かあるの…?』
「………」
シャドゥピュールの質問に何も答えない男。
やがて、道のない行き止まりに着いて歩みを止めた。
『??ここに何かあるの…?』
「えぇっとね…」
男が振り返ると、シャドゥピュールを見た。
『?』
こちらを見ている事にシャドゥピュールが首を傾げながら不思議そうに男を見る。
「お、お嬢ちゃんって、「怪しい人に着いてったらだめだよ
」とか言われたことないの?」
『言われたことあるよ…?ママと約束した…』
「へぇ、ママと…ママはちゃんとしてるんだねぇ」
『うん、してる…』
「そっかそっか…じゃあ、お嬢ちゃんは僕を怪しい人って思ってないんだねぇ…フフ」
『?(何が言いたいたいんだろ…?)』
「だめだよ
…?お嬢ちゃんみたいな可愛い子が、不用心にホイホイ人について行っちゃあ…。じゃないと…」
ビリビリビリッ!
『!?』
「こんなことされちゃうよぉ!?」
男が、シャドゥピュールの服の胸あたりを掴むといきなり破いてきた。
露になる胸に驚きながらも男を見る。
男は息を荒らげニヤリと笑っていた。
それを見たシャドゥピュールはやっとここで
『(あ、この人ヤバい人だ…)』
という事に気づいた。
「こ、こんなに可愛いのに無防備だね…!それじゃ、いただk」
『えいっ…』
男が何かしてきそうだと察し、すぐさま踵を男の頭の上に落とし抵抗をした。
かなり力強くしたらしく、男は顔面から地面にぶつかると少しばかり地面が凹んだ。
『(早く逃げなきゃ…!)』
そう思い、シャドゥピュールは破かれた部分を荷物で隠しながら走ってその場から逃げ出した。
『(急げ急げ…!)』
路地から抜け出すと偶然通り掛かった女性とぶつかりそうになってしまった。
「きゃっ!?」
『ご、ごめんなさい…!』
ちょこっと頭を下げるとシャドゥピュールはそのまま逃げるように走り去った。
「な、なんだったのかしら…(そういえば、あの子の服微妙におかしかったような…)」
不思議に思った女性がシャドゥピュールが来た方向を見ると例の男がぶっ倒れてるのを見つけた。
「え、ちょ、ちょっと誰かー!誰か倒れてるわ!」
「な、なんだって!?…ん?こいつの顔どこかで…」
「あっ!こいつって、今騒ぎになってる変質者じゃない!?」
「ってことはさっきの子も被害に!?」
シャドゥピュールが男を撃退したことにより、街の治安がひとつ守られたのだが、本人はその事を知らないまま帰るのであった。
ーーー
家の前でジュリーグラッジが落ち着きが無い様子でウロウロとしていた。
『(遅いわね、あの子ったら…)』
シャドゥピュールが帰ってこないため心配になって家の前で彼女が帰ってくるのを待っているのだ。
迷子にでもなって帰って来れないのだろうか、誘拐は…あの子事態が強いからそうそう起きるわけあるのか…などなど頭の中で考えていた。
『ママ…』
『!もう、遅いじゃn』
『た、ただいま…?』
シャドゥピュールの声がしたため振り返り、我が子を見ると言葉を失い固まった。
本人がいる。
買い物の荷物がある。
それはいい。
何故服の胸部分が破けてるのか?
明らかに何かしらのことがあったとしか思えない状況に言葉が出なかった。
何も言わない母を見てシャドゥピュールは大変困った様子をしていた。
『お、お買い物、出来たよ…?』
『………』
『ま、ママ…?』
『いや…
それどころの話じゃねぇだろ!!!』
やっと言葉を出し、直ぐにシャドゥピュールの手を引っ張って部屋へ直行する。
気がせるように指示をすると、ジュリーグラッジは頭を抱えた。
『……とりあえず、どういうことが説明しなさい』
『え、えっとね…』
シャドゥピュールは、自分に起きたことを全部ハッキリと説明した。
それを聞くと、ジュリーグラッジは更に頭を抱えた。
『私言ったよね、変質者や怪しい奴が居たらついて行ったりしちゃダメって…!』
『あ、怪しい人って思わなかったから…』
『いや、話を聞いてるだけで初っ端から怪しいんだけど!?』
はぁ…とため息をつき、チラッとシャドゥピュールの方を見てみる。
シャドゥピュールは、耳をへたっとさせ相当落ち込んでいるようだった。
それを見て、再びため息をついた。
『…まぁ、怪我は無いみたいだしちゃんと買い物が出来たことは偉いわ』
『!ホント…?』
『えぇ、ホントよ。確認したらちゃんと全部あったし…ま、そこは褒めてあげるわ』
そう言って、ジュリーグラッジはシャドゥピュールの頭を優しく撫でてあげた。
頭を撫でられ、褒められたシャドゥピュールは嬉しそうな表情を浮かべ、尻尾を嬉しそうに揺らした。
『えへへ、嬉しい…』
『ただし!変質者に着いてったことに関しては全っっっぜん許してねぇからな!』
『うっ…ごめんなさい…』
再度言われ、再びシャドゥピュールは耳をシュンっとさせた。
ーーー
その後、ジュリーグラッジは自室に戻ると考え込んでいた。
『(はぁ…どうしたら認識できるようになるかしら…)』
どうやったら、シャドゥピュールが怪しい人とそう出ないかの認識ができるようになるのかを考えていた。
そんなことを考えてる時、
「先生!」
いきなり部屋に入ってきたのは、この施設の中でも1番の年長の男の子だった。
『あら…どうかしたの?』
「シャドゥ姉ちゃん、酷い目にあったんだろ!次行く時はオレも行く!」
男の子はじっとジュリーグラッジの事を見つめる。
「絶対に行ってやる!!」という意思が分かるぐらいには真剣な様子だ。
だが、まだまだ子供。そう簡単に許す訳には行かない。
そもそも、またシャドゥピュールに1人だけでおつかいに行かせようかすら悩んでるというのに2人で行かせる訳には行かないとジュリーグラッジは思った。
『あー…2人ともちゃんともう少し大きくなれたら良いわよ(それが、いつの話になるのやら…)』
「(一緒に行く時は、シャドゥ姉ちゃんを守ってやる…!)」
何とか宥めさせて男の子に寝るように促しこれの部屋まで連れて行ってあげた。
『(全く、世話が焼けるわね…)』
そう思いながらも、ちゃんと買い物出来たこと事態は大変嬉しいことだなとジュリーグラッジは思っていたのであった。