ちょっと体調崩してしまいました。
ので、メールから投稿して編集します。(携帯からブログの編集画面で直接打ち込めない…と、思ったら、そうでもなかった。プレビューで追記部分は表示されない仕様な模様)
ここから、話の本題です。
大体どういう話なのか、わかって貰えると思います。
続きから。
ガラン、ガラン、と、重い金属のベルの音と共に入ってみれば、
ゴツリ…ゴツリ…と岩のような硬質なものをぶつけ合っているかのような異様な音がしていたが、
「いらっしゃい」
言葉と共に、リオの関心は店の内装へと向かう。
元は倉庫でもあったのだろうか、窓のない煉瓦の壁もそのままな店内に電灯が薄暗い店内を所々と照らしている。高いカウンターテーブルに銀色のスツールが七つ。ガラステーブルの四人席が幾つか並んでいて、最奥には小さなステージまであるようだ。
このような場所が、第二次世界大炎上後のプロメポリスに残っていることに、街を焼いたかつての罪がほんの少しだけ救われたような安堵の吐息ところで。
「リオ」
もう一度声をかけられて振り向いたカウンター内には、下方からの間接照明によって店主だろう男の姿を浮かび上がらせていた。
「レミー・プグーナ…?」
リオの誰何を肯定した彼の背面の棚には、背形もラベルも様々な酒瓶が数多あり、此処はカクテルも配するバーだと知れた。
「ようこそ、迷い込んだね」
何が『迷い込んで』『ようこそ』なのか、副業を禁止されている公務員、しかも、本来の業務に加えて街の復興に僕という猫の手すら借りたい多忙を極めてる筈の彼が、このような店を営む―若しくは、手伝う―理由は、とか、数々の疑問を浮かべているだろう顔を見て、レミーは、少し痛そうに、笑う。
「辺りを見渡してごらん」
何故だと訝しげになりながらも、言われた通りに首を巡らせ――そのまま、捻った。
テーブルの一つには、バーニングレスキューのアイナとルチアに、何故かゲーラ。彼女らは、リオの入店に気付くと気さくに手を振ってくれたが、ゲーラだけが何故かバツが悪そうに微笑むだけで、いつもの彼がそうであるように全開の笑顔で『ボス、こちらです!』と招こうともせず、その距離をもった態度に違和感を拭えない。
余程変な顔でもしているのか、リオの様子を見て、テーブルの女性たちが可笑しそうに声高らかに哄笑する。
「あら〜あの“リオ”は違うのに〜!」
「ま、気持ちはわかるんだけどね!」
そう思わせぶりな苦笑を浮かべるアイナに、何事かを問おうとしたリオだったが、それを止めたのは店中に響くような怒号だった。
「うちのかみさんが好きなのは、花だ!」
なんと、あの人類の大半を見捨てる、しいては、かつて無い程の大量殺戮計画、パルナッソス計画幇助の罪に問われ勾留されている筈のヴァルカン元大佐が、バーニングレスキュー隊長であるイグニスに、今にも噛み付かんばかりに唾を飛ばしていた。
「初めて一輪の花をプレゼントした日から、かみさんは記念日ごとに花をねだっては、庭の花を豊かにしてゆくんだ。女神もかくやな彼女の輝く笑顔をキサマ、知らんな!?」
「ないな、俺の美しい人(ゴージャス)が好きなのは、その妖艶な身体にあうシルクのドレスと大ぶりの宝石の入ったアクセサリーだ!」
受けて立つイグニスも、勾留中の被疑者たるヴァルカンの立場を知らない筈もないというのに、あくまで犬猿の仲たる男に対峙し、サングラスの奥から剣呑とした視線を向けて、罵倒を浴びせ返す。
「いや、道端の花でも喜べる彼女だが、着飾った美しい彼女(ゴージャス)の、はにかみながらも嬉しそうな宝石も霞む笑顔の輝きを知らんとは――さては、お前、彼女に苦労させているな!?」
「ヴァカ野郎! 確かに魅力的な彼女なら何を着ても美しいし、フリーズフォースに所属していた頃の高給取りとはいかないが、うちのかみさんの微笑みを曇らせるほどの貧乏なんて、させるわけないわ!」
互いに互いの奥さんの本当の笑顔を知らないんじゃないかと罵り合う、大の男―ヴァルカンは背が低いが―の異様さに、リオが目を瞠っている間にも、目に見えて怒りに顔を紅潮させたヴァルカンがヴァルヴァルと唸って反撃に出た。
「キサマこそ、キサマと結婚なんてした不幸な彼女を着せ替え人形なんぞにして自己満足して、更に不幸な目に遭わせてないだろうな!?」
イグニスの眉間と鼻に、見たこともないような嫌悪の皺が寄る。
「お前こそ、お前と結婚した不幸な彼女(ゴージャス)の趣味が、実はガーデニングってことではなく、野菜を自給自足させているってだけではなかろうな!」
リオが少し引いてしまう、大人げない大人達の醜い言い争いは平行線のまま、遂に。
「ヴァルカーーーン!!」
「イグニーーーース!!」
ゴツゴツ頭突きをかまし合う、更に醜い争いに発展した。さっきの音は、これか。
少々呆れながらも傍観するリオの耳に、しかし、この時――決して聞き流してはいけない言葉が、異口同音に飛び出した!
「俺のガロを不幸にするヤツは、許さん!!」
その一言で。
「ガロの恋人は、僕だーーー!!!」
色んな状況や違和感を全て吹っ飛ばして、かつての炎上テロリストぶりを知らしめる事も辞さぬと、リオが二人の間に躍り出た!
「あーー、更にややこしくなってきた……」
バーカウンターの中で頭を抱えたレミーは、成人はしているらしいがお子ちゃまなリオの為に、頭を冷やせるようノンアルコールカクテルを作る事にする。その名は『プッシーキャット』可愛い仔猫ちゃん、頼むから落ち着いてこの場のドレスコードを理解してくれ。
-続く-
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