なんか書き終わってはいたのにいつまで経っても上げてないやつが色々あるので
短めのやつ2つだけ上げて「ブログを更新したぞ」という顔をしようと思います。(ドヤ顔)
あとこのまま放っておいたら記事として上げるの忘れそうだったので。
Wの第6迷宮でしゅんころされる解散後ティー(スズト・フィデル・スバル・レナータ・シキ)と
Xの第3階層の敵、デモンズコフィンにしまわれてめちゃくちゃにされるスバルです。
あとたぶん…たぶんR-18G的なものだと思います。身体貫かれてるし……。
なので大丈夫な人だけ追記から見てね。お願いしますね。
◆健康被害どころじゃねえな
赤い翅を持つ巨大な蛾がその大きな分厚い翅を一際大きく羽ばたかせた途端に、数少ない迷宮の灯りに照り返されて僅かに煌めく波が迫ってくるのが見える。
正体不明の攻撃に城塞騎士(フォートレス)のフィデルが咄嗟に前に出て盾を構えるが、波は空気と一緒にうねり拡がって、瞬く間に5人を取り巻いて。
全員の呼気が詰まった頃に、攻撃の正体に気が付いたのはシキだった。
「これッ、りんぷ、んッ、あ゙ぁっ、あ゙……!!」
周囲に情報を伝えきるよりも前に、武器を握っていない片手で頭を掻きむしる。
脳を針の筵にされてそのまま全ての針で頭の中をかき混ぜられている。思いついた瞬間は例えでしかなかったそのイメージが形を成して現れる。
針を抜かなければ死んでしまう。仲間にも刺さっていたら抜いて助けてあげなければ。
首ごと吹き飛ばせば痛くなくなって万事解決なのでは? いや、そんな事をしたら。
これはまずい、と頭の中で叫んでも、目に映る闇黒が極彩色に色付いている事にシキは気付かない。
レナータは不安げに瞳だけで全員を見回しながら、それでも口は術式を唱える事は止めずに。この行動を終えた後の次の自分の行動を考える。
煌めく波――蛾の鱗粉が貼り付いたであろう唇が、鼻腔が、眼球が痛みを訴える。それとは別に、ちりちりと全身の皮膚が焼け付き粟立つような感覚もレナータの身体を包んでいる。
どうやら現在、まともに自我を保っていられているのはレナータだけのようだった。
暗く視界が不明瞭な迷宮の為にいつも以上にまとまって行動していたのが仇となり、全員が鱗粉の波に呑み込まれ、何らかの状態異常――恐らくは混乱に陥っていた。
一口に混乱と呼んでも症状は様々だが、共通しているのは“正気を失う”ということ。
しきりに怯えた叫び声を上げながら虚空に向かって矢を放ち続けるスバルも、
怒り狂う吼え声を上げて槌を振り回し柱を殴り付けるフィデルも、
背を丸め冷や汗まみれで唸って自らの顔面を引っ掻き続けるシキも、いつもの様子を知るレナータにとっては、とても正気だとは思えない。
印術を放ったら直ぐにでもテリアカβを使わなければ、きっとそのまま総崩れだ。
焦りに駆られながらも着実にあと僅かで術式を唱え終えるレナータの視界の端で、鱗粉でもない何かが一瞬、煌めいた。
「っひぐぅ!!」
異変に咄嗟に身を翻したレナータが悲鳴を上げる。
シルエットを膨らませ弱点を誤魔化す為のルーンマスターの厚着の装備に騙されず、的確にレナータの脇腹に突き刺さるのは、スズトが持っている刀だった。
柄を握るスズトの瞳は赤く、赤く、輝いている。羅刹と化している際の特徴だった。その中でもレナータは違いを感じ取り、スズトも正気を失っている事を直ぐに察する事ができた。
表情が一切合切消え失せているスズトの名前をレナータが呼ぶ前に、スズトは柄の先端を靴の裏で蹴り下ろす。
レナータの表情が改めて苦痛に歪む。貫通した刀がルーンマスターの衣服を持ち上げ貫いて、赤い波模様を纏った刀身が姿を現せる。
改めて柄を握ったスズトがレナータの身体から刀を取り返すように真横に振り抜けば、僅かな肉や布を物ともせずに切り裂いて。
「あっ、ぐ……う、うっ」
腹部の半分を切り裂かれたレナータが数歩よろめいて、膝を付く。見る見る間に淡い色合いの衣服が赤く染まっていく。服に隠れて実態こそは視えないが、体から何かがどろどろと溢れているのがレナータ自身、判ってしまう。
致命傷だ。メディカを使わなければあと数分持つかも分からない。
それでも。
残り僅かで中断させられていた術式を紡ぎ終え、放出の印が刻まれた杖の先を巨大な蛾へと向ける。
「わたしがッ……!!」
ごう、と音を立てて巨大な火柱が蛾を包む。ギチギチと悲鳴のような音を上げている。
この隙にテリアカβを使ってあげなければ。まずはすぐ近くにいる、刀を取り落とし表情を強張らせたまま硬直しているスズトにでも。
そう思い、震え始めた手先で自分の手荷物の内を探るレナータの周囲が、パチパチと弾けるような音を立てる。
顔を跳ね上げたレナータが直ぐに原因を察知した。印術師(ルーンマスター)だからこそ気が付けたそれは。
元素のバランスが自分の周囲でだけ崩れて、熱を持ち――、
「ぎゃっ」
巨大な火柱がレナータの足元から立ち上り、容赦無く身体を包み込む。反射的に上げた悲鳴も炎に呑まれ喉を焼き潰されて一瞬で止まる。
周囲に未だ舞い続ける鱗粉がレナータの放った印術(ルーン)を読み取り、コピーし、蛾にとって外敵であるレナータへと放出した。
もとより魔物へ向けたその強大な印術は、不完全なコピーだったとは言えど、弱り切って逃げられない生物一匹を焼き尽くすには十分すぎる力が備わっていて。
火柱が晴れた地面に残るのは、僅かな燃えカスと装備の金属片だけだった。
唯一正気を保っていた外敵の駆除に成功した後は巨大な蛾――モスロードの独壇場であった。
湾刀のような両腕を振るえば面白いように肉が裂け、骨が絶たれ、小枝を剪定するかの如く切り離される。
ひとり、他より硬い肉があったが、それも腕を振るう回数が他より数回増えたのみ。
迷宮はまた、いつもの静けさを取り戻した。
◆あのねリスペクト
「! しまっ――」
スバルの刀を握る手がブキミカズラの蔓に巻き取られ、ぐんと引き寄せられる。
武器である刀を手放すわけにはいかない。スバルは魔物の群れへと引き寄せられながらも咄嗟にもう片手で採集用のナイフを抜き取り、蔓を切り払う――よりも早く、不意にブキミカズラの蔓が緩み、スバルは半ば放り投げられたように姿勢を崩す。
その先に居たのは、デモンズコフィン。
棺から無数にひしめく亡者達の隙間から生える巨大な肋骨のような部位がぐわりと開き、そのままスバルを出迎える。スバルが仲間に何かを告げようと開いた口を、亡者達の手が塞ぐ。無数の亡者達の手は、刀を持つ腕を捻り上げて取り落とさせ、逃れようと藻掻く足を、反らす喉を掴み、無力な生者を歓迎する。
そして開いていた棺がゆっくりと、閉じていく。
咄嗟に駆け寄ろうとするスズトと、それを引き留めるシキの姿が、スバルが見た最後の仲間の姿だった。
密閉された棺の中の暗闇に囚われたスバルが身を捩る。あちこちを固く掴まれた身体はぴくりとも動かす事ができないが、それでも抵抗を続ける事が今のスバルが出来る唯一の行動だった。
埃とカビと腐敗臭にも似た生臭さが入り混じった不快な臭いがスバルの嗅覚に強く届く。
命の危機に置かれている焦燥感と不快感の最中に、口を塞いでいた亡者の手の指の一本が唇を割って口内へ入り込もうと歯をなぞる。
スバルはそれに思い切り歯を立てて拒絶した。
……亡者の指であるその部位がずるり、と口の中でほどける感覚がした。
驚きに身を固める間も無く、指だった部位――ぬめりを持った細い触手がスバルの舌に巻き付いた。思わず悲鳴を上げて開いてしまったスバルの口に様々な太さの触手が数本なだれ込む。
気が付けば棺の中でひしめいていた亡者達は、無数の肉色の触手に姿を変えていた。
「ゃえッ、ぇあ゙……ぐ、ぶッ」
まだ言葉を吐き出せる隙間があった口に新たな触手が入り込む。喉奥を突かれ否応にも襲われる吐き気の波にスバルの肌が粟立ち、背筋に悪寒が絶え間なく走っていく。
迷宮の深層に訪れる貴重な生者、重ねて豊富なマナを蓄えたルナリアであるスバルの身体は、生のエネルギーに飢えた亡者達には久方ぶりにして極上の馳走だった。
生者の熱を、そして良質なマナを逃さず味わわんと、亡者の触手達が粘着質な音を立てながら身体を隅々まで舐り回す。衣服の隙間からもずるずると入り込み、スバルの両手と顔以外を覆うウォーロックの衣服が不自然に波打っている。
全身を包むおぞましい感覚に襲われながら身動ぎひとつできないスバルに許された行動は、口内を撫で回す触手達に時折隙間が空くことによって僅かに取り込まれる酸素で細い呼吸を繰り返し、意識を繋ぐ事だけだった。
足りない酸素を求めて呼吸の動作が増えていく。心臓の鼓動が早くなる。膨らんでいくばかりの焦燥感とは裏腹に、込め続けていた筈の身体中の力が抜けていく。
今すぐ仲間が棺を開けてくれる事を願いながら、スバルは霞み始めた思考を正否問わずに募らせる。
身体中をゆっくりと舐め回していた触手の1本が、尻の割れ目に身を擦り付けて進み始めた。嫌な想像がスバルの頭に過ぎり、一瞬だけ明瞭さを取り戻した意識がはっきりと嫌忌する。
けれども亡者達が手を休める事は決して無い。
「ん゙っ、ふゔッ、うぅゔーーーっ!!!」
粘液を擦り付けていた触手が緊張に窪んだ其処を見つけ出して、先端が躊躇無く身を埋める。異物が入り込む恐怖と悍ましさと痛みにスバルが身体を固く強張らせている間にも、ぬめつく触手が無遠慮に身を沈めては押し拡げていく。触手に塞がれたスバルの喉の内でくぐもった悲鳴が絶え間無く木霊して、見開いて揺れる瞳からは瞬きの必要すら無い大粒の涙が頬を伝う。その涙すら掬われ舐め取られていた。
触手は尺取虫のように一時的に弛ませた身を伸ばす事を繰り返し、どんどんスバルの体の内へと入り込んでいく。内臓を滅茶苦茶に蹴り上げられる苦痛に喘ぐ事すらできない状態で、全身から噴き出続ける冷や汗を亡者達に丹念に味わわれている。
「(死ぬッ!! 死、ぬ……! 助けッ、早くっ……!!)」
ナイトビジョンが働くスバルの目に映るのは、棺の内壁も見えない程にひしめいている無数の触手。そのどれもこれもが自分に向いて、競い合うように伸びている。
ついさっきまで服の表面でしか起こっていなかった不自然な波打ちが、自分の腹の内で起こっているのが悍ましい感覚を頼りに理解できてしまう。
頭の中でひたすら唱え続ける言葉は、呼吸がままならない事に対してか、内臓を掻き回され続けている事に対してかは、スバルにとっては判別できない物になっていた。
「ごォッ、お゙、ゴボッ」
スバルの喉を抉り声帯や鼻腔を撫で回す触手達の一本が、食道を通り抜け胃壁をも味わって幽門へと突き進む。いよいよ呼吸を完全に堰き止められたスバルの身体が無意識にびくびくと震えて跳ね上がる。
突き進んでいた触手は十二指腸の途中でしばし動きを停め、そして――突如として一気に引き抜かれていく!
「がぇッ!! ぉ゙ごっォ、ぉ゙お゙お゙ぉ゙お゙ッ!!!」
漏れ出た悲鳴の殆どは触手が連れて来た空気によって声帯が震わされ、自然に漏れ出た“音”でしかなかった。
喉を侵していた触手の全てが引き抜かれ、自由になったスバルの口が酸素を取り込もうと荒く不規則な呼吸を続けるが、それも数回後には意に反して溢れ出始める吐瀉物によって阻害される。そうなっても必死に呼吸を繰り返そうとするスバルの喉が誤嚥を起こし、咳で吐瀉物が飛び散るものの触手達はそれをも一滴も逃さず、美味そうに堪能していく。
「げ、ッェ゙あ゙……、うぶッ……!」
スバルが改めて自らの吐瀉物以外に喉を塞がれるのを感じ取り、意思を問う事無く咄嗟に閉口してしまう。そして休む事無く続いていた内臓を掻き回す悍ましい感覚が気が付けば喉元までせり上がって――、
ずるり、と口から触手の先端が顔を覗かせた。
「ッ、が、ェ゙っ……」
自らを貫き通した肉色の先端を一時は視認し、驚愕と苦痛に見開かれ続けていたスバルの瞳がやがてぐるんと裏返る。
そうして、スバルはやっと意識を手放した。
その後、スバルは仲間に無事助け出され一命を取り留めたのか、
それともそのまま亡者達の贄として終わってしまったのかは、定かではない。