言葉を交わす事で、愛を再燃出来るのならば、
私は喜んで、饒舌になりましょう。
貴方の抱える、苦悶を取り除く術が私自身の存在の有無だとすれば、
私は喜んで、貴方から姿を消しましょう。
貴方が幸福であれば、身を裂く後悔と絶望にも耐えられる。
そうして、
意固地にならなければ、私は私を見失ってしまう。
2007-3-31 21:32
忘れたくない。
忘れて欲しく、ない。
貴方と出会えた、穏やかな空間のカフェテリア。
貴方という人を知った、真夜中のレストラン。
貴方と体温を感じあった、朝靄の見える部屋の一室。
貴方と幸福を噛み締めた、広大な青空。
何もかも、貴方を愛したから得た、想い出。
空は、暗くて。
雲は、黒くて。
私が存在していた、今は貴方と離れたあの場所が。
今では手が届かなく、声も届かず。
ただ、涙する事でしか、
貴方を思う事は出来ずに。
”逢いたい”と。
叶わぬ夢を馳せて息付く現実しか、ない。
……もう、貴方に触れる肉体はあの世界には無く。
もう、貴方と再び出会える喜びも、絶たれた。
雨が、貴方を追い詰める。
雷鳴が、轟いて、貴方も私も、悲しみに打ちひしがれる。
あの、美しく、幸福の増幅剤であった空。
きっと、貴方も同じ想いでいるでしょう。
だけど、今では。
過去の幸福にしがみ付く、不憫な醜態と成り果てて。
上から貴方の涙を垣間見ては、酷く悲しみに暮れる。
忘れたくない。
忘れて欲しく、無い。
私が生に執着する様になったのは、
人を愛する心が生まれたから。
……貴方を、全身で愛したから。
忘れて欲しい。
貴方の涙を、拭ってあげる事が出来ぬのなら、
涙を生む元凶を取っ払ってしまえばいい。
私は貴方を忘れない。
私は貴方を、忘れない、から。
未だあの場所で存在する貴方は、
私を忘れる事で、再び笑顔を取り戻して欲しい。
―――貴方は、常に笑顔でいて。
2007-3-30 11:00
この空を眺める度、思い出す。
君とこの地で、
この場所で寄り添い、
穏やかな時間(とき)を噛み締め、きつく手を繋いで。
―――”幸福”だと、呟いた過去。
君は、今。
この青々とした美しい空を見る事が出来ていますか。
君は、今。
以前のような、僕を幸福にさせる笑顔を見せていますか。
僕は、今。
今は亡き貴女を想い過ぎて、胸が、苦しいです。
空は青く、雲は白く浮かんでは流れ行き。
其れでも僕の君に対する愛は、何時までも変わる事はありません。
空の、蒼が、目に染みる。
雲の、白が、胸を痛める。
遥か遠いであろう、あの空の向こうに。
君は柔らかな笑みを浮かべて、僕を見つめているのだろうか。
貴女が、居ぬ今。
あれ程までに楽しみにしていた、
無限に拡がる、この空を眺める日常が。
悲しく、寂しく、辛く、怖く。
僕から、
涙と、
貴女への美しき思い出を、
無常にも奪って。
空の彼方へ、消し去ってしまうのです。
―――貴女を、忘れたくない。
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この想いを糧に、生きていきたいのに。
2007-3-30 10:59
何かを強く欲した時、
自ずと何かを捨て去らねばならない、現実が在る。
其れが、
自分が世界に存在し得る、
”等価交換”という、
当たり前の、
過酷な試練でもある。
「道は、二つ」
確かに幸福に包まれていた、温もりある世界。
当然の如く生み出される、”愛情”を全身で感じ取り、
当然の如く奪われた、”生命の終焉”をこの瞳に焼き付けた……幼き頃の面影。
予測など出来る筈も無い。
確実に削ぎ落とされる寿命は、いつ何時訪れるのか容易に悟る事が可能であれば。
……誰もが別れを迎え入れる事は、そう難しくはないだろう。
「道は、二つ」
此れまでの幸福に何時までも浸かり続けるのか。
今後成長する可能性を投げ出し、其のまま留まり続ける選択を手に取るか。
「……どうせなら、そうして死んだ方が……」
永遠に哀しむ悲劇も、生み出されずに。
あの、既に朽ちて消滅した陽だまりを感じながら、生涯を閉じていけるのかもしれない。
「道は、…………」
だけど、俺はまだ。
動く腕がある。
動く脚がある。
動く口がある。
動く。
心臓が、在る。
生命の核が動く限り、未来を止めてはならない。
嘗ての幸福を守り続けて生きていきたい。
だけど、もしかすると、歩き続ければ、先へ進めばもっと。
大きな幸福に出会えるかもしれない。
「道は、一つ」
……前に進めば、今後も目を塞ぐ程の災難に見舞われるだろう。
だけど、きっと、此れまでない喜びを噛み締める未来にも逢えるだろう。
進む。
不安と淡い期待を抱きながら、脚を動かす。
俺には、掴み取る幸福を得る権利がある。
俺には、奪われた不幸を修正する使命がある。
だから。
この俺という世界のちっぽけな存在が。
規則正しく刻む鼓動が途絶える日まで。
”過去の幸福”を未来の為に埋葬する。
失われた多くの犠牲を取り戻す為。
自身が引き金にした、
あの日の惨状を、
笑って話せるような、過去にする為に。
2007-3-30 10:59