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利吉さん

秋の午後、芝生に背中を擦り付けるコーギーを見て、彼女は隣で「面白い」と笑う。

私は心の中で言う「君もあの犬とそんなに変わらないよ。」
いつになったらテンションの高い落ち着くのだろうと見ていると、持って来たお弁当を食べ終え、寝転がり、暖かい日差しの中話し掛けルコと、30分。寝息が聞こえた。
やっぱり、あの犬と変わらない。と私は思う。
秋の半ばはまだ日差しが暑い。

私の誕生日に靴下をくれた彼女。
料理が上手いと見栄を張った彼女。
自分はモテるんだ、と横目で私をチラッと見た彼女。

自分とそっくりな犬を「面白い」と笑った可愛いヒト。
「好きなんだもん」とそっぽを向いて泣いたいじらしいヒト。
僕が眠る君に掛けたこの布の意味に気付いてくれない可哀想なヒト。

.

利吉の片思いオチでしたー

そこにいる人の話

彼女の才能は「楽しめる」事だと思う。
他のいろんな欠点を凌駕するほどの魅力だ。

いつだったか、犬の写真が送られてきた。
可愛いでしょう。と1言だけ添えた手紙も。

考える暇もなく「かわいい」と口から言葉が漏れた。
きっと彼女は何にも考えていないんだ。だからこそ彼女のひらめきはかわいい。

俺は「変わらなくて良いよ」と言ったことがある。
もし料理が下手なままでも、掃除が苦手なままでも、変わらなくていいと心から思ったんだ。
彼女のどこが好きか、って。そんなの分からない。
何でだか、好きなんだよ。
別に何がってんじゃない、何か・・・好きなんだよな。

彼は何でも安請け合いする。
私がCMを見ていて「食べたいな」なんていうと「いいね、食べようか」と言ってくれる。
だけど、 彼の返事はあまりに早いものだから「すごく遠いのよ」と笑た。
笑ったら「知ってるよ」と彼が笑った。
「そっか」
「そうだよ、君が知ってて僕が知らない事なんてのは、そうそう無いよ」そんなことをこれ見よがしに言うけど、彼は私と話していて「え、そうなの」とよく言う。
それに、いつも優しい目をしてる。
「夕日が見たいな」「いいよ」
「美味しい中華を食べよう」「いいねぇ」
「こんなお鍋がが欲しいな」「よっしゃ」

叶えて欲しいなんて切望は無いのだけれど。
彼が頷くたびに私は笑顔になる。
「約束がたくさんね」
「これから先は長いから、大丈夫だよ」
彼の何が好きか、って。
そうね。
よく分からないな。でもね安心できるの。
この人は私の味方なんだって、胸の一番深いところから信頼できるの。
喧嘩はするけどね。


きらきらしている目は子供みたいで。
エネルギッシュに夢を語る時の瞳には他の何モノも写さない。
だけど、底知れない優しさを胸に持つ彼の強さは、全てを吸い寄せる。

ふわふわしている足取りは生まれたての動物みたいで。
誰にも見えない霧の掛かった夜道を、恐も抱かず奔放に軽快に、突き進んで行ける感覚は他人には共有出来ないものだ。
だけど、転がってるだけの石を宝石にも暖かい小鳥にも変えられる力を彼女は持っている。

昔、恋をしたことがあった。移ろう季節のように軽やかなもので、次の季節が来ればすっかり忘れてしまえた。
彼女に出会ったとき、一緒に移ろう季節を楽しもうと思った。
全部を隣にいてもらおうと思った。
運命的なことは無かったし、電気が走ったりもしなかった。燃えるような情熱を持った訳でもないし、懐かしさを感じたりもしなかった。

けれど「いいか。」と思えた。
彼女が怒ってても、走り回ってても、何にも考えてなかったとしても。
彼女との将来を考えると何だか、未来が楽しそうに思えた。


昔、恋をしたことがあった。心の底にいつまでも居座るような恋だった。ふたを開ければ悲しみは色褪せずに香るようで。遥か永く寄り添うものなんだと思っていた。


彼に出会ったとき、香りも、味も、影もないひとだと思った。
でも、きれいな人だとも思った。
何を考えてるのかわからない人だけど、心臓の美しい色だけは透けて見えるようだった。
時とともに心がゆっくり暖かくなっていく。

運命的なことは無かったし、電気が走ったりもしなかった。燃えるような情熱を持った訳でもないし、懐かしさを感じたりもしなかった。

けれど「すきだ。」と思えた。
例え私がすごく眠くても、何かに夢中になっていても、疲れてヘトヘトな時でも。

彼との将来を考えると何だか、未来がたまらなく待ち遠しく思えた。


こんにちは、未来。
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こどもから、大人へ、大人から人間へ。

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自分の為に生きることをやめたとき
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弱虫ペダル 新開さんの彼女と泉田君

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前歯の隙間から

好きだよ。の声が漏れている。
彼のすきっ歯をよく見れば、春と同じ色が漏れている。