観てきました。
以下感想。
長文です。
ボロカスに書いてます。
内容としては渋谷と渋谷の平行世界「渋天街」を舞台にバケモノと人間の親子愛、師弟愛を描いた作品。
昨今の世間の家庭環境や親子関係の変化、特に今回は父子関係にスポットを当てている模様。
個人的に良くも悪くも印象に残らなかったです。
アニメーションとしては楽しめました(特に3D)がストーリーがどうにも釈然としない。
と言うのも物語全体が唐突な展開な上にテーマの割に内容が軽いからだと思う。
まずテーマですがどの辺りに親子愛(関係)もしくは師弟愛(関係)があったのか分かりませんでした。
熊徹と九太の間にお互いを尊重をする姿は終始見られなかったように思います。
熊徹が寝食の保障をする変わりに九太が家事を行うという言わば家主と居候の関係でしかない。
九太は何をしに何を求めてバケモノの世界に来たのでしょうか。
そもそもこの不可解な関係は渋天街の現宗師(主導者的な位置?)の引退によって起きた後任決めが端を発する。
弟子すらいない熊徹には宗師は相応しくないという世論があるなか、ふらりと立ち寄った人間界でたまたま九太を見付け声をかけたのが始まり。
宗師後任に名乗りを上げたのは熊徹と猪王山。
宗師がどのような立場でどんな影響力があるものなのかは分かりません。
しかし人徳、人望、実績、力量のある猪王山に対して粗暴で荒くれ者の熊徹の理由が、ただ「勝ちたいから」というのでは対抗馬としてはかなり無理がある気がする。
お互いに譲れないものがあるでもなしに個人の武力の才のみで雌雄を決するのには疑問を感じる。
知的生物として普通に投票で良いのでは。
そして唐突さ、物語の展開の不親切さも際立つ。設定がガバガバ。
無編集の映画観ているはずなのに編集されたテレビ版観てる気分。
特に闇穴に関しては何がなんだかサッパリ分からない。
闇穴は人間にしか無いとされるがそもそも闇穴自体が何かが分からないので漠然としていて印象がボヤける。
そして人間が渋天街に干渉すると災厄が起きるとされ、渋天街の皆に忌み嫌われている割に具体例が全く無い。以前訪れた人間によって何が起きたとか、どういった災厄でどの位の規模や種類の被害があるのかすら分からないので更にボヤける。
個人的には「負の心に取り付かれる」と解釈してましたがそれでも釈然としませんでした。そもそも誰にでもある負の思いが人間にしか無いってどういうことなの。
さて闇穴を持ってしまった各々の出生を振り返ると…
一郎彦は出生からして不憫には思う。乳飲み子の時点で捨てられ親の顔すらも分からない。正真正銘の天涯孤独の身だ。
唯一の救いは拾ったのが猪王山であると言うこと。
猪王山も自分で育て上げるという自信もあったようだし、普段の立ち振る舞いを見ていればどれほど息子たちに愛情をかけていたかも分かる。
実際は闇に飲み込まれたわけだが、しかしあまりにも唐突過ぎる闇堕ちに戸惑いを隠せない。
何故あれほどまで狂気乱舞し、闇に堕ちるに至ってしまったのかという点がどうにも腑に落ちない。
自分の出生が分からない、親兄弟と容姿が異なることで心を患ったのは分かる。
しかしその矛先が「人間のくせに!」になるのは理解しがたい。
そしてあの状況になるまで誰も、宗師すら手を貸さなかったというのにも疑問が残る。
九太は直接被害を受けているにもかかわらず何の違和感も持たなかったのでしょうか。昔の一郎彦を知っていればこそ異変に気付くと思うんですが。
人間界で不良に絡まれると平気でボコるくせに抗議すらしないとか。
一方、九太に関しては…自分で選んだ道なんですよねぇ…。
両親の離婚後に親権を得た母親が交通事故で亡くなったという経緯は同情の余地があるがその後の態度はどうにも擁護しようもない。
親戚に引き取られ、取りあえず衣食住に困らない生活が保障されていたにもかかわらず、未だ始まってすらいない新生活から一時の感情で逃げ出したのである。
それで「みんな大嫌いだ」で闇穴発動は身勝手と言う他あるまい。
そして久々に、さらには偶然に人間界に戻れた九太は懐かしさなのか新鮮さなのか同世代の女の子の影響なのかは最早定かでは無いが人間界での生活を望むようになる。
「ひとりで生きていく」と自分から家を出て行き8年もの間音信不通にしておきながら養育費、教育費、身元保証人として元父親を頼るのだ。余りにも虫が良過ぎる。
また「ひとりで生きていく」と言っておきながら結局8年間も親代わり(とまでは言わないにしても寝食を共にしてきた同居人)をしてくれた熊徹たちに対して「話にならないから」、「もう強くなったから」と一方的に突き放すのは本当に糞の極みである。
両者色々抱えたものはあるかもしれないが闇落ちの動機付けとしては説得力が到底足りないように思う。
要は人間含め誰もが誰かの支えとなり支えられながら生きてるってことなんですかね。一人ぼっちだと言ったところでどうやっても一人ぼっちにはなれない。そのくせ全員が自分一人の力で生きていると思ってる。
人間ってクソだなって話。
以下は私が勝手に期待していた展開にならなかったことへの不満とかです(笑)
【刀】
刀好きな私にとって剣劇、殺陣が無かったのは残念。キービジュアルやグッズで刀を展開している割に抜刀すらしないってどうなってるの…。
【修行パート】
各地の尊師に師弟で修行の旅に出るという胸熱展開は肩透かしに終わる。「強さとは何か」という漠然とした観念を一言二言語られるだけ。挙句「色んな考え方があるんだね」という一言で片付けられ、その後取り上げられるようなこともない。
まともな修練シーンが1カットもねーじゃねーか!
そして8年間もの期間、切磋琢磨し修行してきたとは思えない稚拙な戦闘の宗師決定戦。
修行の成果どころかスタミナ管理すらしない。これだけ盛り上がった場で冒頭の戦闘シーンより盛り上がらないとかどうなってるの…。
【チコ】
なんなのあのワタボコリ。
たまに出てくる母親らしき亡霊の一言二言が意味不明で殺意すら沸く。
いる意味あったの…。
【闇穴の解決策】
弱い心と共存し、自分自身と向き合って、葛藤を経て乗り越えていく成長なら理解できる。
しかしどう見ても闇がもう一人の人格作っちゃってますよね。
九太が暴走した一郎彦の闇人格を倒すことで一応の決着を見てますが単に闇人格を取り除いても意味はないと思う。
何故なら自分で解決したわけでも無くある意味強制終了されてるから。根本が解決されなければまた堆積して闇人格が形成されますよね…。
しかも目が覚めた一郎彦の「ぼくは一体今まで…」の発言からして闇人格時の記憶があるのかすら危うい。
あれ程の公衆の面前で不義を働いた己の行いを知ったら更に深い闇に堕ちそう。
最終的に九太ですら自分自身の芯、物語で言うところの「胸の中の剣」は他人頼りですからね。
結局誰も成長していないと言うオチ。
前作から全く心に届かないストーリー。テーマの割に理路整然さに欠けると思います。観衆を説得させるまでのプロセスが足りない。
「絆」とか「家族」とか「独り立ち」とか。そんなの家族によって、個人によって違うから一括りに出来ない。その上特異過ぎる生い立ちと世界観。これはどこの層が対象だったんですかね。
とはいえ中には共感できる人もいるのは確かなので感じ方は人それぞれ、で終わる話なんだが。
取りあえず私はそういうの(と言うよりこの作品)を求めてないのが分かった。
せめてアニメくらい理路整然と何のわだかまりも感じないで観たい。